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メイトウ株式会社
のり付き塩ビシート FAQ~よくある質問とその回答集

Q: 塩ビシートにはいろいろな種類があるようですが違いを説明してください。

A: いろいろな分類方法がありますが、まずはフィルムの製造方法の違いから大きくわけて①キャスト製法と②カレンダー製法に分類されます。

①キャスト製法とは・・・
もともと硬い物質である塩ビを粒(ペレット)状にしたものを多量の溶剤(可塑剤)に入れて溶かし液状にします。この液体をシリコンなどを塗布した紙のようなものの上にたらし、熱風乾燥機の中を通過させ可塑剤を揮発させ、最後に残る薄い膜状のもの(Film)がキャスト製法により製造されるフィルムです。 製造には可塑剤が多量に必要になり、また、再度可塑剤を揮発させる(環境への負担を減らすために燃焼させる)為、材料の無駄が多くコストがかかります。製造のロットは比較的小さくても製造可能です。 製品は材料が一度液体状になってから自然に乾燥したものの為、品質が安定しており、施工後の縮みがすくなく、曲面への施工もしやすくなります。

②カレンダー製法とは・・・
同じ塩ビのペレットに少量の可塑剤をかけ、多少やわらかくなったものをロール状の棒のようなもので圧力をかけて平らに延ばしたもので、うどんやピッツァを作る要領に似ています。 無駄になる材料が少ないことと大量生産が可能なため一般的に㎡あたりのコストは安くなります。 ただし、製造装置にかかる費用はキャスト製造設備に比べて大幅に高く、大量生産をしてはじめてコストが安くなります。 キャストフィルムにくらべて最終製品の薄さに限界がありフィルムの中に残る張力も比較すると高くなります。塩ビシートの用途としては平面貼りに向いています。 ただし、キャストフィルムの中にも材料の差や、製造技術の差があり、一概にキャストフィルムだからカレンダーフィルムよりも良いとはいえません。 また、カレンダー製品の中にも素材、製造設備、製造技術の差により品質にはかなりの幅があり、かなり品質の劣るものからキャストフィルムに負けない品質のものもあることにはご留意ください。


Q: カレンダー製法に基づくフィルムにもいろいろ種類があるのですか?

A: 大きく分けるとポリメリックタイプとモノメリックタイプに分類されます。 ともに可塑剤の種類の違いをあらわしています。 可塑剤とは塩ビを溶かし、柔らかくする材料のことですが、ポリメリックタイプはそもそも高分子化合物の為、分子構造が複雑で手足を広げた状態のものになります。 逆にモノメリックタイプは分子構造が比較的単純であるといえます。 

ポリメリックは・・・分子構造が複雑で広げた長い手足が互いに結合しあい、絡み合っているためお互いが離れにくく薄く延ばしても割れにくく、ひっぱってもそう簡単にはちぎれません。 より安定しているため空気中に自然に飛び出していったりフィルムの表面にそう簡単には飛び出してきません。 そのため耐候年数も長く、溶剤インクなどで印刷する場合もきれいに仕上がります。 

モノメリックは・・・分子構造が単純で、分子同士の結びつきも弱い為、無理に延ばしたり、引っ張ると破れてしまうことがあります。 ポリメリックと比較すればより不安定なため、温度、湿度、圧力などの影響を受け、より容易に活性化するため、耐候年数もポリメリックと比較すると短くなります。 可塑剤がフィルムの表面に出やすいため、溶剤系インクなどでのプリント時には製品の品質によってはインクの染み込みが不安定になる場合があります。 

モノメリックタイプの可塑剤の方が材料コストが低いため比較するとポリメリックより安い場合がおおくありますが、最終製品の価格の差には可塑剤以外にも使用する顔料の違いも加わりますので単純な可塑剤だけのコストの差だけではありません。 モノメリックフィルムとポリメリックフィルムの違いのほかに製造設備、製造技術、原材料の違いにより最終製品としてのフィルムの品質にも千差万別あります。


Q: 同じキャストフィルムでも違いがあるのですか?

A: 使用する原料の選択、製造設備、製造技術、経験、保管環境、品質管理基準その他の差により、同じキャストフィルムでも国内外メーカー(各メーカー)により差があります。 キャストフィルムであっても粗悪品になると、以下の様な現象が発生します。
①製造ロットごとに色が微妙に異なる、あるいはかなり異なる。
②厚みが不均一でカッティングプロッターでカットしてカス取りすると一部はきれいにめくれるが一部は切れていない。
③溶剤系インクジェットプリンタでプリントしたあとに縮みが大きい。
④チューインガムのようにやわらかくなってしまい寸法精度がだせない。
⑤ラミネートフィルムを貼らないと施工出来ない。


Q: 3年もの、5年もの、7年もの、10年ものなどと耐候性能をうたっていますが
   実際の耐候年数はそのとおりなのでしょうか?

A: 一般的には使用する可塑剤、塩ビ、顔料、製造方法以外に貼る場所、気候、環境などにより屋外での耐候性能が異なります。 良心的なメーカーはその耐候年数を測定する基準を明らかにしています。 たとえば、Orafol、MACtac、Averyなどの欧米の一流メーカーでは条件としてメタル上に貼りつけた塩ビシートを垂直方向に立てて、欧州中部(製造メーカーの所在する場所)での平均的な気候を前提として加速度試験を行い得られた数値を理論値として発表しています(その際に出た数値は理論値であり保証値ではありません)。ただし、それでも何をもってシートの寿命と判断するかの基準は示されていません。 色物であればもともとの色からデルタEがどの程度変化したかなどを正確に表示しているメーカーもありますが、殆どのメーカーでは万一の市場クレームを避ける意味からある程度マージンをとって数値を発表していると考えられます。

国内環境だけでも北海道と東京都内と沖縄では温度、湿度、紫外線などの差以外にも排気ガス、亜硫酸ガスなどの差も大きく、同じ場所でも日照時間、太陽光線のあたる角度、時間帯にも大きな差があります。自動車などの車両に貼った場合などもドアに貼る場合とボンネット、屋根に貼る場合では条件が大きく異なる為、耐候年数はひとつの目安と考えて頂く必要があります。

ちなみに、マーキングフィルムではなく、溶剤系インクジェットプリンタ用糊付塩ビの場合は使用するインクの種類、量、プリント後の処理、乾燥時間、などにより耐候年数は大きく影響を受けるため、どのメーカーも印刷後の耐候年数に関しては一切の表示を避けています。 インク自体の耐候年数や溶剤の強弱の差もあり、これからすれば1年から数年というのが現実的な幅だと考えられます。


Q: カス取りのしにくいフィルムとしやすいフィルムがありますがなぜですか?

A: これは多分に個人的判断や慣れの要素もあるので一概には説明できませんが、品質の差やカッティングの仕方などにより左右されます。 

製品品質の差によるカス取りの難易度の差については糊付の塩ビフィルムは大まかにいえば塩ビフィルム、糊、ライナーおよびその上に塗布されているシリコンの層により構成されています。 そのどれもが均一な厚みを持っていれば最終製品としての糊付塩ビシートが均一な厚みを持つ可能性が高いといえますが、均一な厚み以外に塩ビシート、糊、シリコン、ライナーとのマッチング、それぞれの材料などにより大きく影響を受けます。実際はこれ以外にConverting(巻き取り加工)技術、紙管の品質、梱包、保管環境、輸送方法、お客様の保管、使用環境・条件などにも影響されます。材料の均一な厚みを得るためには均一な厚みを持つ塩ビシート、均一に塗布された糊、均一に塗布されたシリコン、均一な厚みを持つライナーペーパーが必要です。しかしそれぞれにばらつきを100%遮断し絶対値としての誤差ゼロを求めることは不可能です。 それぞれの材料ないし塗布技術において現実的に達成可能な最高のレベルの均一性を達成したとしても塩ビフィルム、糊、シリコン、紙それぞれの厚みのばらつきが相乗されるため、最終製品における厚みのばらつきには使用するフィルムと紙の品質の違い、糊、シリコンの塗布技術、使用する紙管の品質、巻き取り技術などの相乗効果にてそのばらつきがさらに拡大します。 この厚みのばらつきがある部分では適当な深度でカットできるのにあるところでは深過ぎ、あるいは浅過ぎとなり、きれいにカス取りできる場所とできない場所ができたりする原因になります。 この基本的な製品の品質の良否を判断することは非常に重要なことなのですが、忘れてはならないのが製品ごとに厚みには違いがあるということを認識することです。すなわち同じメーカーのシートでもキャストフィルムと、モノメリックフィルムおよびポリメリックフィルムでは往々にして厚みが異なります。 それぞれのフィルムの厚さにあわせてカッティングプロッターのカッターの深度を調整する必要があります。 いわゆる「カス取りがしにくい」というのがこれまでつかっていたフィルムにあったカッターの深度で新しく試そうとする品質的には上のグレードの製品を深度調節をしないままでためしにカットしてみて深度が合わず、深過ぎないし浅過ぎるカットが原因で「カス取りがしにくい」場合が多々見受けられます。 また、カッターの歯が寿命にきていれば深度があっているように見えても一律にきれいな深度でカットできていないため、一部の糊をカットできなかったりしてカス取り不良の原因になる場合があります。 もちろんプロッターの整備不良も原因になりかねません。 さらにこの問題を複雑にしているのは糊とシリコンのマッチングがメーカーのデザインや設計、哲学により各社各様に異なるため使い慣れている製品とカス剥離にかかる力が微妙に異なるため、いつもと感じが違うだけで「カス取りがしにくい」という表現になってしまうこともあるようです。 後半に述べたカッティングプロッターのカッター、深度調節などをそれぞれのフィルムにあわせて調節した上でカス取りの難易度を判断するようにしましょう。 せっかく品種が良くて安く手に入るものを安易な判断で退けることは得策ではありません。


Q: アプリケーション・テープはどのようなものを使用するのがいいでしょうか?

A: 一般的にはアプリケーションテープはカットし、カス取りしたあとに離型紙に残っているマ-キングフィルムをはがして、どこかほかに貼りつけるためのものです。 アプリケーションテープには材質的にみて紙製とフィルム製の二つに大別されます。 紙には材質、厚さ、硬さ、透明度、伸縮性、耐水性などの差があり、フィルムにも同様の差があります。 一般的にはフィルムのほうが貼りつける場所の確認がしやすいため作業がしやすいといわれています。 糊については強弱などの特性があります。 弱すぎるとマ-キングフィルムが離型紙からはがしづらいし、強すぎると貼るときにはがれにくいことになります。 一般的には大きな切り文字などの場合には弱粘着タイプを、細かい文字の場合には強粘着タイプが使われます。 ただし、マ-キングフィルムの糊の特性にもよりますが、いずれにせよできるだけ弱い糊のアプリケーションテープを使用することがあとの作業をやりやすくします。 弱い糊のアプリケーションテープでも次のようにすればマ-キングフィルムを離型紙からきれいにはがすことができます:

まず、カス取りしたマ-キングフィルムの上にアプリケーションテープを貼り、空気などをきれいに追い出します。 次に、フィルムを使う場合はマ-キングフィルムの離型紙をつけたままで位置あわせをして、離型紙の片方を貼りつける場所にくっつけ、アプリケーションテープが下に、マ-キングフィルムの離型紙が上にくるように裏返します。 そこで離型紙の隅を鋭角に持ち上げながら引っ張り、剥がしてゆけば離型紙がきれいに取れますので、離型紙を剥がしながらマ-キングフィルムをスキージーで抑えながら貼りつけていきます。 この方法で行えば弱粘着タイプのアプリケーションテープでほとんどの作業が可能となります。 また一度使ったアプリケーションテープを何度か使いまわすことも可能です。



Q: 溶剤系インクジェットでプリントしましたがうまくプリントできませんでした。
   何が原因でしょうか?

A: プリントする前提として、まず使用するプリンタおよびインクに向いている塩ビシートかどうかを確認する必要があります。通常はプリンタメーカーないしメディアメーカーから適用プリンタ、ないし適用塩ビシートに関する情報が入手可能ですが、情報が無い場合は事前にディーラーに相性を確認しましょう。 さらに初めて使用する塩ビシートの場合には本番のプリントをする前に必ずテストプリントを行い最適なプリンタの印刷設定を行うことが肝心です。 この印刷設定にはまず、キャリブレーションといってインク各色ごとのグレイスケールが指定の濃度でプリントできているかを確認する必要があります。 濃度調整はインクの噴射量のほかにヒーター温度の設定も重要な要素です。 さらには最適のプリントモード(単方向印刷、双方向印刷、シングルストライク、ダブルストライク、プリントスピード、解像度など)を選択し、次にRIPでハーフトーンの種類、ドットサイズ、カラーカーブなどを調整しプロファイルとして設定する、ないし最適なプロファイルを選択することが大切です。 いくらいい塩ビシートでもプロファイルが最適でないときれいな印刷品質は期待できません。


Q: ヒーターの温度調節はどのようにしたら良いでしょうか?

A: 使用するインク、塩ビシート、プリントのモード(解像度、スピード、単・双方向)などによりことなりますので、使用条件によって経験値的にデータをとっていくことが基本となりますが、一般的には温度が低いとインクの染み込みが悪くドットゲインが大きくなり、最悪の場合ムラやにじみの原因となります。 逆に高すぎるとドットゲインが小さすぎてざらざらした感じのプリントなったり、糊が緩み、塩ビシートが収縮して気泡が入ったり、塩ビシートが盛り上がってきてヘッドをこする場合もあります。


Q: 乾燥時間はどのぐらい必要ですか?

A: 溶剤系インクの種類やインクの噴射量にもよりますが本格溶剤の場合で最低48時間は印刷したシートを平らにしたりつりさげたりして乾燥させる必要があります。 エコソルインクなどの乾燥の遅いインクの場合にはそれ以上の乾燥時間が必要です。 特にラミネート処理をする場合はこれを励行しないと、塩ビの中に残留した溶剤が糊と化学反応を起こし、糊の接着力を著しく低下させる原因になる場合がありますので十分注意が必要です。 これとは別に良く起きる事故の原因として、印刷する会社と施工する会社が別の場合、たとえラミネートフィルムをしない場合でも印刷直後に印刷物をロール上に丸めて発送し、一方、受け取った施工会社がそのロールを数日そのままで放置ないし保管しておいた場合などは事故につながる可能性が極めて高いことが指摘されています。


Q: 印刷物がはがれてしまいました。 どうしてでしょう?

A: これにはさまざまな原因が考えられるため一概にお答えでませんが、良くある事例としていくつかの例をとって説明します:

(1) 施工するときの温度がメーカー指定の温度よりも低い場合、あるいは高い場合。

(2) 水貼りを禁止されている製品であるにもかかわらず水貼り施工をした場合。

(3) 溶剤インクジェットプリンタで印刷後、十分乾燥を行わないまま巻き取りしたロールを放置しておいた場合。 特に、巻き取り装置は狭い場所でもプリンタを設置できるため便利ですが、糊の性能への影響を考えると必ずしも有利ではありません。 やはり印刷したものはできるだけ丸めずに広く伸ばして乾燥するに越したことはありません。 乾燥には最低48時間かけましょう。 Laminate Filmをかける場合はこれを厳守しないと事故る可能性が極端におおきくなります。

(4) 施工する表面は中性洗剤で洗浄・乾燥後、アルコールなどで油性物質を完全に取り除き、埃などの汚れの無いところで施工する必要があります。 どの条件がかけても剥離の危険が残っていると考えてください。

(5) 本来平面用につくられている塩ビシートにプリントして波板などの凹凸のある場所に貼れば、はがれてくる確立はかなり高まります。 曲面や凹凸のある場所に施工することがわかっている場合は、迷わずキャストフィルムないし高級ポリメリック塩ビ製のシートを使うようにしましょう。 平面用のフィルムを使って一時的にコストを下げても、剥がれがおきれば再出力、再施工と大幅赤字になることは必至です。 安物買いの銭失いにならないように気をつけましょう。

(6) 使用する溶剤系インクの量が多い場合、水性の糊を使用した塩ビフィルムの場合に、塩ビフィルムが溶剤の影響を強くうけ、糊との相性に変化をきたし、糊とフィルムの粘着力が低下することからはがれたり、トンネルになったり、収縮したりする事故につながる可能性が高まります。 インクの量を多く使用する場合は溶剤系糊のフィルムを使用してください。


Q: タイリングして貼り合わせ、大きな面積の制作を施工しました。
   長期に使うためLaminateもしてあります。
   塩ビどうしを重ね貼りした両側にひび割れ、亀裂、剥離は生じました。どうしてでしょう?

A: まず、Laminateすることでフィルムの収縮率は2倍になります。 一方、接着する糊の粘着力は2倍になっておらず、もとのままです。 使用された塩ビフィルムとLaminateフィルムの品質によっては収縮率の高い製品もあります。 また、印字するフィルムに高級品を使ってもLamniate Filmでコストをけずり安物を使用すればせっかくの印字用フィルムの性能を帳消しにする場合があります。 その逆の場合もあります。 また、Laminateする場合、溶剤インクの乾燥が十分でないと溶剤がフィルムの中に閉じ込められ裏面の糊と化学反応を起こし接着力を著しく低下させます。 接着力が弱いままタイリングした印刷物を貼り合わせた場合、それぞれのフィルムがそれぞれのフィルムの内側に向かって収縮するため、貼り合わせた場所が上下左右に引っ張られることになります。 糊の接着力が確保されている場合はフィルムの収縮が起こりにくいのですが、フィルムの収縮する力に糊が絶えられなくなったとき、引っ張られたフィルムが破断し、亀裂が生じます。 貼り合わせたところは塩ビ同士なのではがれにくく、そこに亀裂が入ることはまれで、貼り合わせた場所の両側に亀裂が生じる場合がほとんどです。 とくに再剥離タイプのフィルムを使う場合はもともと接着力をおさえてあるため注意しないとこのような事故につながる恐れがあります。 大きい面積に貼り合わせ施工する場合は、基本的には縮みの少ない溶剤系糊を使用した高級品を使うことを是非お勧めします。 Laminate Filmも安物は事故につながる確率が高まります。 さらにフィルムの乾燥を十二分に行い、施工後は貼り合わせた部分にスリットを入れ、万一フィルム同士が収縮しても、互いに引っ張りあわないようにしておくことが大切です。 施工する場所のゴミ、汚れの除去、施工温度、天候などにも十分注意する必要があります。 施工のやり直しは多大な損失につながる恐れが強いので十分注意して手抜きの無いようにすることが極めて大事です。 さらには使用するインクの量が多い場合は水性の糊だと塩ビシートとの結合が弱まり、はがれ、縮み、トンネルなどの事故につながる恐れがあるため、溶剤系の糊を使用した塩ビシートを使用するようにしましょう。


Q: 印刷品質の不良は必ずしもフィルムの品質のせいではないと聞きましたが
   どういうことですか?

A: 現在一般に使用されているインクジェットプリンタはせいぜい1440DPI程度の解像度しかありません。 ポスターなどの屋外公告物を印刷するには一般的には360DPIとか高くても720DPI程度が普通です。 これでも数メートルはなれた位置から通常は見るものなので問題は無いはずなのですが、屋外公告物にオフセット印刷並みの印刷品位を期待するユーザーや顧客がいます。 5000DPIから8000DPIの精度のオフセット印刷は133LPI以上まで可能なスクリーン印刷の品質をインクジェットプリンタでプリントする屋外公告物に求めること自体が間違っていることはわかっていても、顧客の要望を満たすため、あるいはプレゼンの段階で他社との競争に勝とうとするため、近場でみてもきれいに見させるため、あえてドットゲインをあげてグラデーションがスムーズにでているようにプリントする場合があります。 インkジェットプリンタのドットが見えること自体がいやとおっしゃるかたもいます。 しかし、その場合はドットゲインをあげようとしてわざわざプリント温度を下げ、インクの乾燥を遅らせるため、ゴミの影響も受けやすいばかりか通常では出ない可塑剤やシリコンなどの影響をもろに受けるため白い点々や印刷ムラがでることになります。 場合によっては印刷物の両サイドに可塑剤の影響や印字ムラの起きる場合もありますが対外の場合、インクの乾燥が遅いことが原因です。 インクの吸収の良いフィルムを選択することも一法ですが、あえてドットゲインをあげようとするかたには解決になりません。 通常であればきれいなドットであるものを、きれいとみなしてもらえないからです。 この場合、万一グラデーションがきれいに出たとしても文字などのベタのエッジ部分のキレが悪くなり、カラーコントロールもほとんど不可能になります。ベタ同士が並んでいるところではお互いの色がにじみあったりする事故につながります。 いたずらにドットゲインをあげようとすることはおすすめできません。


Q: 塩ビシートに印刷したとき、左右の端でかすれた感じがでました。
   とくに淡い中間色やハーフトーンの諧調のときにこの印刷のムラが見えてしまいます。
   何が原因ですか?

A: 双方向印字の場合、フィルムの左右の端でヘッドが通過してすぐ折り返すことになるためインクを噴いた直後、すなわちインクが十分乾燥していないのにさらにもう一度その上にインクを噴くことになるため、その部分のインクがなかなか乾燥しないことになります。 さらに、ヒーターも

マシンの先端部に比べて両端部は温度が低い場合がおおく、さらに不利な条件が重なります。

そこで、フィルムの左右の端に限り印刷のムラが見える場合があります。 解決策としてはパス

の数を上げる、ヒーターの温度を上げる、片方向印字にする、インクの吸収のよいメディアに変えるなどがあります。


Q: フィルムの流れ方向に縦縞のムラがでます。なぜでしょうか?

A: プリンタのヘッドの動きが正確でないと縦方向に筋のようなムラがでる場合があります。 プリンタのメカに起因している場合が多いので、プリンタメーカーのサービス会社に連絡をとって調整してもらう必要があります。 ただし、RIPのハーフトーンを変えたり、メディアを変えることで目立たなくなったり、解決する場合もあります。


Q: フィルムの横方向に印刷のムラが30cmごと程度にでます。どうしてでしょうか?

A: 塩ビシートは使用しない場合、保管する場合、輸送する場合などはかならず紙管を宙吊り

にするか、立てておく必要があります。ロールを床に直に転がしておくと、フィルムと糊に悪影響がでますので、絶対やめましょう。 転がしておくとロールの自重で負荷がかかった部分は印字ムラが起きる可能性があります。


Q: 離型紙にPEコートされたタイプの糊付塩ビシートがありますが、
   離型紙にPEコートするメリットはなんですか?

A: 通常の塩ビシートは糊引きした塩ビシートの糊のプロテクト用の離型紙にシリコンを塗っています。糊が離型紙にくっつきっぱなしにならないようにするためです。 カッティング用のフィルムであればこのままでかまわないのですが、溶剤系インクジェットプリンタの場合は塩ビの表面にできるだけ可塑剤などの影響が無いことが重要です。 単なるクラフトペーパーにシリコンを塗布した離型紙の場合、使用するクラフト紙の品質によっては紙の繊維の間を通りぬけてシリコンがクラフト紙の繊維の穴をすり抜けて塩ビの表面に付着したり、糊に含まれている不純物がシリコンの膜や紙の繊維の間を通り抜けて塩ビの表面に付着することがあります。 このような汚れた場所ではインクがはじかれてしまい、結果的に印刷ムラがおきる原因となります。 PEコートすることによりこのような現象を最小限に抑えるため、特に塩ビを溶かす力の弱いRolandやMutohのエコソルインク、SII乳酸系溶剤インク、ミマキSSインクなどに威力を発揮します。


Q: 透明フィルムをガラスや鏡に水貼りしたら糊が白濁しました。 どうしたらいいでしょうか?

A: 塩ビシートを施工する前にかならず、それに使用されている糊が水貼りに適しているかどうかを確認してください。 一般的にエマルジョン系(水溶性)の糊の場合は水貼りには不向きです。 糊が親水性のため、糊が水に溶けてしまい、白濁したり、粘着力が落ちたりするためです。 一般的には溶剤系の糊の方が水貼りには適しています。 とはいえ、エマルジョン系の糊でも水貼りがまったくできないわけではなく、使用方法や注意事項を守って施工するようにしてください。 経験のないメディアの場合は事前にテストすることが重要です。 まず、水貼りする場合には糊が水についている時間を最小限度に抑えることが重要です。 長く水につけておけばおくほど粘着力の低下や白濁のリスクが高まります。 すばやく位置あわせを行った後は、これも間髪をいれず徹底的に水をスキージでかき出すことが重要です。 水が少しでも残った場所はその水と糊が反応し、白濁や粘着力低下の原因になります。 さらに施工する面のゴミや汚れを注意深く取り除いておくことが重要です。 ゴミや汚れがあるとその周りに水が残りやすく、白濁現象を長期化させ、粘着力の低下もさらに高まります。

とはいえ、このような白濁現象は一般的には一時的なもので、水分が徐々にフィルム面の孔を通って蒸発していけば糊は本来の透明性を取り戻し、白濁現象はやがては消えるのが普通です。 ただし、前述のゴミや埃があった場所では水分が余計に残りやすく、長期にわたり白濁現象が残ったり、そのゴミのせいでフィルムの光屈折率が変化しそれとわかるゴミとして認識されてしまう恐れもあります。 もっとも、これは水貼りとは直接の関係はありませんが、やはり、施工面のクリーニングには時間をかけて慎重に行う必要があります。 透明フィルムをガラスや鏡に施工するときに水貼りを是非とも行いたい場合は上記のような白濁現象がおきることを想定して、その乾燥に場合によっては3-4週間、場合によってはそれ以上かかることもあることを念頭にいれて施工のスケジュールを組む必要があります。 あるいは施主様にその旨のご理解を事前に得ておくことも有効です。 施主の事前の理解も得られないまま、ガラスや鏡面に透明フィルムを水貼りした場合、この白濁現象により、施主より検収を受けられない事態に発展するばかりか、やり直しを命じられる危険もあり、大損失につながるRiskもあることをご理解ください。 納期を急ぐ場合で、施主の理解を得られない場合は、水貼りは避け、空貼りで施工することをお勧めします。 そのためには、初期粘着力の弱い、再剥離タイプの透明フィルムを使うことも一つの方法です。 これであればReposionableであるため、位置あわせ、位置直しが簡単で、施工も楽で事故につながるRiskを大幅に回避できます。 Window GraphicsやCar Graphicsに最適です。


Q: マーキングフィルムの紙管に近いほうでフィルムの表面の光沢感が薄れ
   マット調になることがありますが、なぜでしょうか?

A: マーキングフィルムが紙管に巻き取られる段階である程度のテンションがかかっていますので、ロールの内側に近いところほど強く締め付けられている状態があります。 塩ビシートの持つ収縮性もこれに加わり、ロールの内部は常時強い圧力を受けます。 これは製造上ある程度避けられない性質のものです。 この表面のマット化は塩ビシートの表面が離型紙や紙管の微妙な凹凸を拾ってしまうことに起因しています。 ただし、たとえ表面の光沢感が若干減っていても実際の用途、性能、品質にはなんら影響はありません。 通常、施工後ある程度経過すると外気や日光にさらされてかなりの程度に目立たなくなります。 これはMottlingと呼ばれ塩ビシートの持つ特性とお考えください。 この表面の光沢感の変化とは別に、シートの巻き始めの線が約30cm間隔で見える場合があります。 これも同様に用途、性能、品質にはまったく影響はありません。 あくまで、塩ビフィルムの特徴とお考えください。


Q: 施工してしばらくしてからトンネルができました。 どうしてでしょうか?

A: いろいろな原因が考えられますので、原因の特定には分析が必要ですが、下記の要因が考えられます。 

(1) 印刷後の乾燥不十分で糊が溶剤に侵されてしまうと粘着力が低下しトンネルなどの問題がおきやすい。
   印刷後の乾燥は事故を未然に防ぐためには必要不可欠である。

(2) ラミネートフィルムが不適切なものであった。できれば印刷する塩ビメーカーの指定の物がのぞましい。

(3) インクの量が多い場合、溶剤系の糊を使用した塩ビシートよりも、水性の糊を使用した塩ビシートの方が影響を受けやすい。 

(4) アルポリ版などの継ぎ目ではトンネルがおきやすいので、必ず切れ目を入れる必要がある。


Q: 水性糊と溶剤系糊の違いについて教えてください。

A: 下記の基本的な違いがあります。

(1) 水性の糊は溶剤系の糊に比べて一般的に安価である。

(2) 溶剤系の糊の方が雨・水を含む耐候性能が一般的に高い。

(3) 溶剤系インクジェットでプリントした場合、使用するインクの量が多すぎると水性の糊の方が塩ビフィルムとの剥離やトンネルなどの事故をおこしやすい。 インクの中の溶剤が塩ビフィルムにしみ込みフィルムと糊との結合を弱めてしまうからであると考えられる。 インク量を多く使用する色の濃い印刷をする場合は溶剤系の糊を使用した塩ビ製品を使用することをお勧めします。


Q: アルポリ板に溶剤系インクジェットプリンタで印刷した塩ビシートを貼って、はがそうとしたら糊が残りました。 原因と対策を教えてください。

A: アルポリ板の表面にはクリアラッカーがコーティングされている場合が多く、このラッカーのタイプによっては塩ビシートの糊と相性がいいというか、結合し易いタイプのラッカーが多いようです。 この場合、基本的に糊が残り易い環境が生まれていると考えられます。 さらに、溶剤系インクジェットでプリンタ部分のインクの量が多いと、糊のタイプによっては塩ビシートとの結合よりもアルポリ板のクリアラッカーとの結合のほうが強くなる場合があります。 特に塩ビシートの糊が水性の場合にはこの傾向がさらに高くなります。 塩ビシートに使用されている糊が高級な溶剤系の糊である場合には糊残りは比較的少ないのですが、最終的にはどのような物質がアルポリ板の表面に塗布されているかにより、糊残りの多い少ないが影響を受けます。

インクの量が多いと低価格品の塩ビシートで糊が水性のものほど糊残りの危険性は高いとお考えください。


Q: 塩ビに溶剤系インクジェットでタイリングしてプリントし、大面積を施工したところ
アルポリ板のつなぎ目にトンネルが出来ました。 原因と対策を教えてください。

A: アルポリ板のつなぎ目は太陽による熱などでアルポリ板が収縮したり動いたりしています。

塩ビシートもこれにあわせて引っ張られたり、押されたりしているうちに伸ばされた塩ビシートが収縮しきれずにトンネルになることが多くあります。 とくにインクの量を多く使用した場合などは糊がアルポリ板側に残り、塩ビシートから剥離してしまうケースもあります。 アルポリ板を張り合わせてある大画面では必ずアルポリ板のつなぎ目で塩ビシートに切れ目を入れてください。

また、インクを大量に使用するケースには溶剤系のインクジェットメディアを使用し、できればラミネートフィルムは塩ビメーカーの推奨品を使用するようにしましょう。 もちろん、プリント後の乾燥も平面で十分時間をかけて行う必要があります。


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